機能性胃腸症(ディスペプシア)Functional dyspepsia
西洋医学的な”機能性胃腸症(ディスペプシア)とは・・・”
”機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)”いうのは、あまり聞き慣れない言葉ですが、ここ数年、内視鏡検査をしても潰瘍などの器質的な異常が認められないにもかかわらず、上腹部痛、上腹部の不快感、腹部の膨満感、悪心、嘔吐、ゲップなどの上腹部症状を”機能性胃腸症”として診断し 治療をしています。
【定義】
上腹部もしくは心窩部に限局した不快感や疼痛があり、3ヶ月以上の期間にわたり症状が出現し、そのうち1/4以上の期間に症状があるもの。そして、その原因となる器質的な疾患あるいは代謝疾患などがないもの。
【分類】
①胃食道逆流型・・・胸焼けや胃液がこみ上げるなどが主な症状
②運動不全型・・・早期満腹感や上腹部の膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐などが主な症状
③潰瘍症状型・・・夜間痛や周期性不快感、上腹部痛や空腹時痛などが主な症状
④非特異型・・・うつ症状や各種不定愁訴を訴える
機能性胃腸症を起こす要因には、主に以下があります。
【胃の運動機能の障害】
食事をすると、胃はその食べ物を貯留するために緊張を緩めて膨らみ(適応性弛緩)、胃のぜん動で適量ごとに十二指腸へ食べ物を送ります。機能性胃腸症ではこの適応性弛緩が不十分であるために(適応性弛緩不全)、胃に十分な食べ物が貯められなかったり、適切な胃のぜん動ができなかったりして、胃もたれなどの症状を起こします。
【内臓の知覚過敏】
過食で胃がパンパンになったり、刺激の強いもの(唐辛子の成分であるカプサイシンなど)が胃に入ってくることでより症状を起こしやすい状態となっています。
【心理社会的なストレス】
睡眠不足や過労などの身体への負担や、悩みやストレスなど精神面での負担があることも機能性胃腸症の原因となります。不安やうつなどの気分の不調も症状に影響を及ぼします。
病院で検査をしても、異常の見つからなかった人は、この機能性胃腸症と考えて差し支えないでしょう。病院では、それぞれの症状に合わせて、胃の機能を調整する薬や胃酸を押さえる薬、あるいは精神的な症状には抗うつ剤などが処方されているようです。
東洋医学的な”機能性胃腸症(ディスペプシア)”とは・・・
東洋医学には、この機能性胃腸症に該当する言葉はありませんが、それぞれの症状に対して、胃脘痛””呑酸””納呆”などといっています。では、どんなタイプがあるか見ていきましょう。
①食積タイプ
【原因】
暴飲暴食やもともと胃弱体質の人が消化の悪い食事をしたときに、胃?部に飲食が停滞してしまうために起こります。胃食道逆流型や運動不全型がこのタイプになります。
【症状】
腐酸臭のあるゲップ 呑酸 厭食 悪心 嘔吐 上腹部の膨満感 悪臭のある便もしくは便秘
②肝気犯胃タイプ
【原因】
過度のストレスや情志の失調により、肝気が鬱滞して気の流れが悪くなり、それが原因で、胃気を損傷し機能が失調して起こります。胃食道逆流型・運動不全型・潰瘍症状型・非特異型がkのタイプになります。
【症状】
食欲不振 悪心 ゲップ 呑酸 しゃっくり 溜め息 胃?部の脹痛 痛み脇部に放散 イライラしやすい 精神的な抑鬱 すっきりと排便ができない
③脾胃虚弱タイプ
【原因】
飲食の不節や過労、ストレスなどにより、脾気を損傷して、脾の機能が失調することによって起こります。運動不全型がこのタイプになります。
【症状】
食欲減退 上腹部の膨満感 無気力 疲労しやすい 倦怠(特に食後) 体が痩せる 多食すると嘔吐 泥状便
④脾胃虚寒タイプ
【原因】
もともと脾胃虚弱の人が、生ものや冷たいものを過食したり、腹部を冷やすと、寒邪が胃に凝滞し、胃気を損傷して起こります。運動不全型と潰瘍症状型がこのタイプになります。
【症状】
脾気虚弱の症状に 胃?部の冷え・冷痛 空腹時痛 腹痛 温めると楽になる 水様便 四肢の冷え 小便清長(薄くて量が多い)
⑤胃陰不足タイプ
【原因】
過度のストレスや情志の失調により、肝気が鬱滞して熱となり、胃陰を損傷したり、長期の病により胃陰を損傷して、胃の滋養を失い起こります。運動不全型・潰瘍症状型・非特異型がこのタイプになります。
【症状】
口や舌が乾燥 口苦 空腹感があるがし食べたくない 胃?部痛(軽微) 大便燥結 尿量少 嘔気を催すが吐かない
機能性胃腸症(ディスペプシア)のタイプ別治療方法
【基本治療】
消化器に関係する胃経や脾経の経穴をメインに使用し、胃の機能を改善し、不快感の軽減を図ります。その他、タイプ別にその体質に合った経穴を使用し、体質改善と自律神経のバランスを整えていきます。
基本治療以外は、タイプ別に下記のような治療をしていきます。
食積タイプ | 【消食導滞法】 上腹部に症状がある場合と、下腹部に症状がある場合に分けて治療をします。鍼治療は、多少刺激を強めにして留鍼をします。鍼治療と合わせて、温灸をします。治療ポイントは、背腰部 腹部 下腿 前腕の前面になります。 |
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肝気犯胃タイプ | 【疏肝和胃法】 鍼治療は、腹部以外、多少刺激を強めにし、腹部は軽めの刺激で、留鍼をします。鍼治療と合わせて、温灸をします。 治療ポイントは、背腰部 腹部 下腿 前腕の前面になります。 |
脾胃虚弱タイプ | 【益気健胃法】 鍼治療は、軽めの刺激で、胃気を補いようにし、留鍼をします。鍼治療と合わせて、温灸をします。 治療ポイントは、背腰部 腹部 下腿の前面になります。 |
脾胃虚寒タイプ | 【温胃散寒法】 鍼治療は、軽めの刺激で、温めるようにし、留鍼をします。鍼治療と合わせて、腹部全体を棒灸にて温めます。治療ポイントは、背腰部 腹部 下腿の前面になります。 |
胃陰不足タイプ | 【養陰和胃法】 鍼治療は、軽めの刺激で、胃気を補いようにし、留鍼をします。便秘がある場合は、腹部の刺激を多少強めにします。治療ポイントは、背腰部 腹部 下腿 前腕の前面になります。 |
治療期間と周期
4~6回の治療を1クールとして、概ね1クール毎に症状が変化していきますので、体調に合わせて治療期間を設定していきます。
最も辛い症状を中心に治療(標治)していきます。余分なものは取り除き、足りないものを即席に補います。2クール目以降 辛い症状が改善したら、次は体質改善(本治)です。じっくり足りないものを補充し、体をリラックスさせ、体全体の調和を図りますます。
胃腸の症状は、比較的短期間で改善していきますが、症状が軽減した以降は、体質改善と再発防止のために定期的に治療を受けることをお勧めします。
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