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甲状腺機能低下症(橋本病)hypothyroidism(Hashimoto's disease)

西洋医学的な”甲状腺機能低下症(橋本病)とは・・・”

甲状腺機能

甲状腺は、喉頭と気管の前外側にある蝶が羽を広げたような形をした内分泌器官です。ほぼ、喉の中央に位置していますが、男性は女性よりも低い位置にあります。とても薄い器官ですので、正常の場合は触診することはできません。

甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されますが、その流れは上記の図のように視床下部から分泌されるTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)が、脳下垂体前葉に働きかけてTSH(甲状腺刺激ホルモン)を分泌させます。そのTSHが甲状腺に働きかけて、甲状腺ホルモンを分泌させます。

甲状腺ホルモンが十分に体内に循環していると、負のフィードバックが視床下部と脳下垂体に働き、TRHとTSHの分泌が抑制され、甲状腺ホルモンの分泌も抑制されます。何らかの原因で甲状腺に異常が起きると、例えば、甲状腺機能が亢進して甲状腺ホルモンが分泌し続けると、TRHとTSHの値が著しく低値くなり、逆に甲状腺機能が低下して甲状腺ホルモンが分泌されないと、TRHとTSHの値が著しく高値となります。

甲状腺ホルモンの働きは下記のとおりです。

①熱産生作用
 ほとんどの組織で酸素の消費量を増加させる。基礎代謝率を上昇させる。
②心臓に対する作用
 アドレナリンのβ受容体を介する作用を亢進させて、心収縮力と心拍数を増加させる。
③糖代謝に対する作用
消化管からの糖の吸収を促進し、血糖値を上げる。
④神経系に対する作用
カテコールアミンの反応性の増強により思考の迅速化・被刺激性の亢進作用を示す。シナプスやミエリン形成作用により脳の発育を促進する。
⑤骨格筋に対する作用
 タンパク質の異化作用を示す。
⑥脂質代謝に対する作用
 肝臓などでLDL受容体を増加させ血中のコレステロール値を下げる。中性脂肪を低下させる。
⑦成長・成熟への作用
 身体・脳の正常な発育と骨格の成熟に必須である。

甲状腺機能低下症の症状と検査所見は下記のとおりです。

①甲状腺機能低下症
  【代謝機能低下症状】
思考低下・認知機能低下・言語緩慢・脱毛(頭部・眉毛外側3分の1)・発汗低下・皮膚乾燥・低体温・寒がり・易疲労感・筋力低下・便秘・食欲低下・傾眠・難聴・低血圧・除脈・貧血・月経過多・腱反射弛緩相の遅延
【粘液水腫症状】
眼瞼浮腫・無関心様表情・舌/口唇浮腫・嗄声・低声化・心拡大・皮膚粘液(圧痕を残さない浮腫)
【検査所見】
総コレステロール(TC)上昇・クレアチンキナーゼ(CK)上昇・fT?の低下・TSHの上昇 ※TSHのみが高値の冷えが強いので、全身に温灸を施していきます。潜在性甲状腺機能低下症がある。この症状はfT4が正常値。  

②慢性甲状腺炎(橋本病)
【好発】40~50歳代の女性
【症状】びまん性甲状腺腫大
【検査所見】
冷えが強いので、全身に温灸を施していきます。抗Tg抗体陽性・抗TPO抗体陽性・細胞診にてリンパ球浸潤が見られる。 ※橋本病では、他の自己免疫疾患がしばしば合併する。

橋本病は、人口1000人に対して4~51人の割合で患者がいます。男女比は、1:10~30と女性が多いことが分かります。また、自己免疫疾患で、抗体によって甲状腺細胞が破壊されることにより発症します。TSHの上昇により、甲状腺ホルモンの分泌が保たれている場合を潜在性甲状腺機能低下症、甲状腺ホルモンの分泌が低下している場合を顕在性甲状腺機能低下症といいます。

橋本病の70~80%は甲状腺機能が正常であることが多いが、40歳以降、甲状腺機能が低下してくるので、最終的には約15%が機能低下症となります。潜在性を含めると成人女性の約10%は橋本病であると言われています。

また、甲状腺機能低下症は、不妊や流産などの原因にもなりますので、上記の低下症の症状に似た症状がある方は、一度甲状腺機能を検査されることをお勧めします。

治療方法は、甲状腺ホルモン薬(チラージンなど)を補充する治療がメインになります。

東洋医学的な”甲状腺機能低下症(橋本病)”とは・・・

東洋医学では、甲状腺機能障害を”癭病(えいびょう)”といいます。特に甲状腺機能が低下している症状には、癭気瘤や癭気面腫などといいます。脾経と腎経が障害されている場合が多く、気血の不足から体全体の機能が低下し、水滞が起こりやすく、その結果として冷えや全身の浮腫が起こります。

①脾腎陽虚タイプ
 【原因】
外邪が深く体に入り込んでしまったことや、過労や長期の病によって脾と腎を傷つけてしまうことにより引き起こされます。また、もともと腎陽が不足している体質により、脾陽も衰えてくる場合と、逆に脾陽が長期にわたり衰えている状態が続くと、腎陽を補うことが出来ずに結果的に脾腎陽虚を引き起こすことになります。
腎気は水を司り、脾気は水を制するので腎陽が不足すると気化作用が障害を受けるので、結果的に小便不利になり浮腫が起こります。また、脾陽が不足すると水湿の流れが悪くなり、余分な水湿が体の溢れて浮腫が起こります。それによって、冷えを呼び、胃腸障害が起こり、全身の機能が低下していきます。
【症状】
四肢や体幹の冷え・顔面蒼白・腰や膝がだるく力が入らない・小腹(下腹の中央)の冷え・下痢・顔面や四肢の浮腫・尿量減少

②心腎陽虚タイプ
【原因】
外邪が深く体に入り込んでしまったことや、過労や長期の病によって心と腎を傷つけてしまうことにより引き起こされます。また、もともと腎陽が不足している体質により、心陽も衰えてくる場合と、逆に心陽が長期にわたり衰えている状態が続くと、腎陽を補うことが出来ずに結果的に脾腎陽虚を引き起こすことになります。
心腎の機能が低下すると、気血を全身に運ぶことが出来ず、また温めることが出来ず、血が寒に犯され流れが停滞し、水湿を化すことが出来なくなり浮腫や冷えが起こります。また、腎陽が不足すると、体の陽気の根本が不足するので、体全体の臓腑を温めることが出来ず、また血も不足することになり、体全体の機能が低下していきます。
【症状】
動悸・息切れ・顔面蒼白・四肢や体幹の冷え・常にだるく無気力・顔面や四肢の浮腫・めまい。耳鳴り・腰や膝がだるく力が入らない・無月経

甲状腺機能低下症(橋本病)のタイプ別治療方法

【基本治療】
橋本病の場合は、甲状腺が腫れている場合がありますので、その腫れている甲状腺に対して、甲状腺周辺と頚部に鍼をしていきます。浮腫がある場合は、浮腫のある部分周辺と浮腫を改善する経穴に鍼をしていきます。

基本治療以外は、タイプ別に下記のような治療をしていきます。

脾腎陽虚タイプ 【温補脾腎法】
腎陽を補う治療と胃腸症状がある場合は消化器を改善する治療が中心になります。腎経の経穴(腰部と下腿)を取穴し、補腎をしつつ、脾経の経穴(背部・下腿内側)を取穴し健脾を施していきます。冷えが強いので、全身に温灸を施していきます。治療ポイントは、頭部・背腰部・下腹部、前腕部・下腿内側になります。
心腎陽虚タイプ 【温陽補心法】
心陽が不足している症状を改善し、心気を補う治療(温陽補心法)を中心に行っていきます。また、腎陽が不足している症状が強い場合には、腎経を中心に、腎気を補う経穴を加えながら治療(温腎壮陽法)していきます。冷えが強いので、全身に温灸を施していきます。治療部位は、頭部・背部・腹部・前腕部・下腿前面になります。

治療期間と周期

週1回を基本として、症状と甲状腺ホルモンの状態を確認しながら治療をしていきます。薬を服用している場合は、鍼灸治療をしていくと、薬が効きすぎて甲状腺機能が亢進してしまうことがあります。適宜、症状を確認し、亢進している疑いがある場合は、すぐに掛かりつけの病院で検査をお勧めします。

不快な症状がある場合は、その症状を取り除く治療を中心に行います(標治期間:概ね3ヶ月)。それ以降は、甲状腺ホルモンの状態を確認しながら、代謝が低下しないような体に体質改善を徹底的に図ります(本治期間)。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせください。

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