鍼灸治療室 翠明館

ようこそ、鍼灸治療室 翠明館へ
心と体の調和をお届けします。
トップイメージ01 トップイメージ01 トップイメージ02 トップイメージ03

子宮内膜症Endometriosis

西洋医学的な”子宮内膜症”とは・・・

子宮内膜症は、何らかの原因により子宮内膜様組織が子宮腔内以外(異所性)の部位に発生した疾患で、疼痛、不妊などを引き起こす疾患です。女性ホルモンであるエストロゲンに依存し、月経時に子宮内膜と同じようにはがれて出血します。生殖可能な女性の約10%に見られます。

子宮内膜様組織の発生機序については、子宮内膜移植説や体腔上皮化生説などの説があり、いまだ解明されていません

①子宮内膜移植説
子宮内膜剥離組織が月経血とともに卵管を通じて腹腔内へ流出し、腹腔に生着、増殖するという説 

②体腔上皮化説
腹膜や卵巣の表層にある中皮細胞が子宮内膜に類似した組織に化生し、これが変異して子宮内膜症に至るという説。子宮内膜はミュラー管を起源として発生し、ミュラー管と中皮細胞はともに胎生期の体腔上皮に由来している。すなわち腹腔や卵巣の中皮細胞は発生学的に子宮内膜に近いため、何らかの原因によって中皮細胞は子宮内膜様組織に化生する可能性がある。 

子宮内膜症の好発年齢と好発部位は下記の通りです。

①好発年齢
子宮内膜症はエストロゲン依存性の疾患のため、エストロゲン分泌量が多い性成熟期(特に20~30歳代)に好発します。また、初経の低年齢化や晩婚化、少子化によって月経の回数が増えることが子宮内膜症の増加に関係していると考えられます。 

②好発部位

腹膜病変 一般的な不妊検査で原因不明であった女性に腹腔鏡検査を行うと20%の女性に腹膜病変が発見されるため、腹膜病変が不妊に影響していると考えられる。 疼痛を引き起こすことは少ない。病変の深さは表在性で、性質は炎症性変化、自覚症状はないことが多い。画像診断では確認しにくい。 赤色病変→黒色病変→白色病変という変化のサイクルがある。赤色病変のときは、サイトカインを放出するため不妊と関係することがある。
卵巣 卵巣に発生した子宮内膜様組織から、月経のたびに赤血球の滲出やうっ血が起こる。剥離組織は排出されないため、卵巣は肥大し卵巣チョコレート嚢胞となる。卵巣チョコレート嚢胞は排卵を妨げるので、不妊の原因になることもある。 月経を重ねるごとに痛みが増強する。月経痛、排卵痛、月経前の痛みが連続し、四六時中下腹部痛、腰痛が持続する。卵巣が腫大すると周囲の組織と癒着する。病変の深さは深在性で、性質は脱組織(内膜組織からの赤血球滲出、血液、内膜組織など)の貯留。自覚症状は強い。画像診断では確認しやすい。 卵巣チョコレート嚢胞の0.7~1%が明細胞腺癌や類内膜腺癌などに癌化する。癌のリスク因子は年齢が40歳以上、嚢胞径が5㎝以上である。
ダグラス窩 ダグラス窩とは、子宮と直腸の間にある腹膜腔の一部。このダグラス窩に存在する子宮内膜様組織により、子宮後壁と直腸壁の癒着が起こるため、ダグラス窩が閉塞する。 月経を重ねるごとに痛みが増強する。月経痛、排卵痛、月経前の痛みが連続し、四六時中下腹部痛、腰痛が持続する。ダグラス窩と直腸の癒着により、子宮と直腸が固定され、性交痛や排卵時にも痛みが生ずる。病変の深さは深在性で、性質は炎症による線維化、平滑筋の化生。自覚症状は強い。画像診断では確認しやすい。
その他 仙骨子宮靭帯、直腸、卵管、膀胱、尿管、虫垂、臍部など下腹部の様々な場所に発生することがある。まれに胸膜に子宮内膜様組織が生じ、これが月経時に反復性発生する気胸を引き起こすことがある。

では、子宮内膜症はどのように診断し、どのような治療方法があるのでしょう。

①卵巣チョコレート嚢胞・ダグラス窩病変
自覚症状がみられやすく、超音波検査、膣・双合診、血液検査(CA125)などで発見されやすい。

CA125・・・卵巣がんや子宮内膜症で大量に生産されるので卵巣がん、子宮がん、子宮内膜症などの腫瘍マーカーおよび補助診断として用いられる。 基準値 35.0U/ml以下

②腹膜病変
自覚症状がないことが多く、検査でも発見しにくいので、確認するには侵襲の大きい腹腔鏡が必要になってしまうことある。このため、不妊治療などで腹腔鏡検査を行った際などに腹膜病変が発見されることがある。こうした機会がなければ通常腹腔鏡検査を行わないため、腹膜病変があっても発見されないままであることが多い。 

子宮内膜症の基本的な治療には次の3つがあります。

①薬物療法  
長期にわたるホルモン療法を行う。使用する薬は、低用量ピル、ジェノゲスト、低用量タナゾール、GnRHアナログなど。

タナゾール療法・・・テストステロン誘導体であるタナゾールを用いて、低エストロゲン状態を作り出し、異所性子宮内膜を脱落膜化、壊死させる療法。
【副作用】男性化症状(体重増加・にきび・多毛・嗄声など)、血栓症、肝機能障害、耐糖能低下など

②保存手術
腹腔鏡や開腹により、癒着の剥離や病巣部の焼灼、卵巣チョコレート嚢胞の摘出を行う。

卵巣チョコレート嚢胞 卵巣チョコレート嚢胞に対して、嚢胞を切開開放し、嚢胞壁を焼灼するだけで治療効果があるため、嚢胞摘出術を行わないこともある。
チョコレート嚢胞
ダグラス窩閉塞 膣と直腸に器具(ユテリン・マニュピレーター)を挿入し、子宮を前屈させた状態で、ダグラス窩の病巣を除去する。
ダグラス窩閉塞
 

③根治手術  
挙児希望がない場合は、腹腔鏡や開腹により、子宮全摘術や付属器摘出術を行う。

東洋医学的な”子宮内膜症”とは・・・

東洋医学では、子宮内膜症に直接該当する概念はありませんが、月経痛が主な症状なので”痛経”が子宮内膜症に該当する概念です。また、慢性炎症により帯下が多くなりますので、”帯下病”も該当します。痛経の場合は、基本的に気血の滞りが原因で起こると考えられています。様々な原因で経穴が阻滞したり、任脈や衝脈の精血が不足して胞脈(子宮に通じる経脈)を滋養できなくなり発症すると考えています。

また、脾虚(消化機能の減弱)により運化機能が失調して内湿が下注したり、腎虚(生殖に機能と強い結びつきのある臓器の減弱)で任帯脈の制約が失調して陰液が流出すると起こります。

A.痛経タイプ

①寒湿タイプ
 【原因】
月経期に雨に濡れたり、水泳したり、生ものや冷たい飲食物を摂取したり、または湿気の多いところに長時間住んでいたりすると痛経が起こる。寒湿の邪が下焦を侵襲し、胞宮(子宮)に注ぐ経血を凝滞させるために痛経が引き起こされる。
【症状】
小腹部の冷痛、拒按(触ると却って痛みが増強)、激しい痛みが腰背部まで達する、温めると痛みが軽減、経量は少ない、経色は暗紫色、血塊が混在

②肝鬱タイプ
【原因】
情緒の変動により肝気が鬱結すると気滞を生じ、そのために血が停滞して胞宮への気血を阻滞させるために痛経が引き起こされる。
【症状】
イライラ、怒りっぽい、小腹部の脹痛(痛みよりも脹りが強い)、拒按、月経周期が不安定、経量は少ない、血塊が混在、胸脇部や乳房の脹痛

③肝腎陰虚タイプ
【原因】
先天的に虚弱で肝腎が虚衰しているか、あるいは房事過多により肝腎虚損になると、衝脈、任脈の精血が不足するために胞脈の滋養が悪くなることにより痛経が引き起こされる。
【症状】
小腹部の隠痛、喜按(触ると気持ちが良い)、経色は淡色、経質は清希、腰背部のだるさ・痛み、眩暈、耳鳴り、顔面蒼白、精神倦怠

B.帯下病タイプ

①脾虚タイプ
 【原因】
なま物や冷たい物の過食などにより、脾陽が不足して水湿の運行が低下すると内湿が生じる。湿の性質は重濁であるため、寒湿が下焦に下注すると帯下が起きる。
【症状】
帯下は多量、白色、無臭で唾液様、だらだら続く、顔色?白;または萎黄、食欲不振、下痢、四肢の冷え、精神倦怠、下肢の浮腫

②腎虚タイプ
【原因】
先天の気の不足や久病、過労、房事過多などにより腎気が不足すると下元虚損となる。このために封蔵機能が失調し任脈不固、帯脈失約になると、陰液が下注して帯下が起こる。
【症状】
帯下は清冷で多量、だらだらと続く、顔色は黒ずんで暗い、小腹部の冷え、腰部のだるさ・疼痛、小便は清長で頻数特に夜間に頻数、下痢

③湿毒タイプ
【原因】
月経期や産後で胞脈が空虚な期間に不衛生であったり、あるいは房事が不衛生であったりすると、湿毒が生殖器や胞宮を襲い、湿濁下注による帯下が起こる。
【症状】
帯下は米のとぎ汁様または黄緑色の膿状、血液が混在することもある、量は多く臭味が強い、陰部の掻痒感、小便短赤または小腹部の疼痛、口苦、咽頭の渇き

子宮内膜症のタイプ別治療方法

【基本治療】
子宮内膜症の鍼灸治療は、痛経が強い場合は痛みの緩和やその他の体調を整えることが中心になります。

現代的な鍼灸治療では、女性生殖器や骨盤からの痛みを伝える神経(第11、12胸髄、第1、2腰髄)を刺激することによって、鎮痛効果を得られるようにしていく。場合によっては、鍼通電療法を加えて、より鎮痛効果を得るようにしていく。

東洋医学的な鍼灸治療は、基本的には気血の循環を改善するような治療を中心に、タイプ別に下記のような経穴を使用し、不定愁訴に対してアプローチしていきます。

寒湿タイプ 【逐寒去湿法】
温めることによって衝脈、任脈の気血の流れを良くする。治療経穴は、中極、関元、命門、腎兪、水道、三陰交、血海、膈兪、帰来、次?など
肝鬱タイプ 【疎肝理気法】
疏肝をはかるとともに心の火を鎮め、脾胃の機能を健やかにする。これに加えて最も気になる身体症状の改善を目的とした経穴を加えていく。治療経穴は、合谷、百会、太衝、三陰交、血海、膈兪、帰来、次髎など。
肝腎陰虚タイプ 【滋腎平肝法】
肝腎を補い、衝脈、任脈の働きを整えることを目的に治療をしていく。治療経穴は、関元、照海、腎兪、肝兪、三陰交、血海、膈兪、帰来、次髎、足三里など
脾虚タイプ 【益気健脾法】
脾の機能を高め、気の産生を促すとともに内に停滞した湿を取り除く。治療経穴は、足三里、公孫、中髎、陰陵泉、帯脈など。
腎虚タイプ 【補腎益精法】
腎の陽気を補い、帯脈の機能を高めて、任脈の固摂作用を改善する。治療経穴は、命門、腎兪、関元、陰陵泉、次髎、帯脈など。
湿毒タイプ 【清利湿熱法】
熱を下げるとともに湿を取り除いていく。治療経穴は、行間、次?、中極、帯脈など 。

治療期間と周期

月経前の症状が強く出ている場合には、排卵期から月経前に集中して治療をしていきます。また、排卵期などに帯下が多くなる場合には、月経後期から低温期にかけて集中して治療していきます。

月経の3周期の治療を1クールとして、概ね3~5クールで、痛経は緩和していき、帯下の量も減少していきます。

1クール目は最も辛い症状を中心に治療(標治)していきます。余分なものは取り除き、足りないものを即席に補います。(標治期間)辛い症状が改善したら、次は体質改善(本治)です。じっくり足りないものを補充し、体をリラックスさせ、体全体の調和を図りますます。(本治期間)

治療の初期段階で、辛い症状は取れますので、最初1クールは、症状の強く出る前の時期に週1回間隔で来院してください。症状が楽になりましたら、症状や体質に合わせて10日に1回から隔週1回程度のペースで来院することで、痛経や帯下病を再発しない体質に改善していきます。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ戻る