自律神経失調症Autonomic imbalance
西洋医学的な”自律神経失調症とは・・・”
自律神経失調症と一言でいても、その症状は様々です。日本心身医学会でまとめられた診断基準は次の3点になります。
全身倦怠感やめまいなどの不定愁訴がある。
器質的疾患や精神障害がない。
自律神経機能検査で異常が認められる。
ようは、健康診断や精密検査で特に異常が認めれらないにもかかわらず、体の不調を感じる場合は、自律神経失調症と考えて差し支えないでしょう。自律神経失調症といっても、どんな症状があるのか名前からではピンときませんね。自律神経というくらいですから、自分の意志ではコントロールの出来ない神経なのです。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、それぞれ体の内臓や内分泌器官、血管など全身の機能を支配しているのです。ですので、起こる症状は多岐にわたることが想像できますね。
【頭】頭痛・頭重感・偏頭痛・・・etc
【目】眼精疲労・目が開かない・涙目・・・etc
【耳】耳鳴り・耳詰まり感・・・etc
【口】口が渇く・口の中が痛い・味覚異常・・・etc
【喉】異物感・圧迫感・喉が詰まる・・・etc
【呼吸器】息苦しい・酸欠感・息切れ・・・etc
【消化器】吐き気・便秘・下痢・ガスが良く出る・腹部の膨満感・腹鳴・・・etc
【循環器】動悸・不整脈・胸部の圧迫感・血圧の変動・立ちくらみ・・・etc
【泌尿器】頻尿・残尿感・尿が出にくい・・・etc
【生殖器】インポテンツ・外陰部のかゆみ・月経不順・・・etc
【筋肉・関節】肩こり・腰痛・関節がだるい・背中が痛い・・・etc
【皮膚】乾燥・多汗・かゆみ・・・etc
【手足】痺れ・冷え・感覚異常・レイノー症状・ほてり・・・etc
【全身症状】倦怠感・疲れやすい・めまい・微熱・不眠・ふらふらする・食欲がない・・・etc
主な症状だけでもこれだけあるのですから、細かい症状を入れると無数にあることがわかります。東洋医学では、これらの症状は”気・血・水のバランス”あるいは”陰と陽のバランス”が崩れたときに起こると考えます。東洋医学は、自律神経の代わりに、内臓それぞれに気が宿り、そのお互いの気の働き掛けによって、全体としてバランスを保ち、スムーズな気のやり取りが出来ることで健康でいられると考えます。ですので、何らかの原因でその気の巡りに異常が起こると、その内臓を含めた経絡上に異常が波及して、その内臓に関係する他の臓器の機能にも影響を与え、全身症状として様々な症状を起こすことになるのです。
西洋医学では、自律神経失調症を次の3つのタイプに分類しています。
【本態性自律神経失調症】
生まれつき自律神経のバランスが乱れやすい体質。
【心身症型自律神経失調症】
ストレスや感情の起伏によって自律神経が乱れる。最も多いタイプ。
【神経症型自律神経失調症】
もともとの体質に心的要因が加わって自律神経が乱れる。
あなたが自律神経失調症がどうかのテストをして見ましょう。もっとも有名なテストに『TMI(東邦メディカルインデックス)』というのがあります。タイトルをクリックするとテスト項目が表示されますので、是非試してみてください。
東洋医学的な”自律神経失調症”とは・・・
さて、東洋医学では、どのように分類するのでしょう。東洋医学では、臓腑に気が宿るという考えたがありますので、それぞれの臓腑の気の異常によって、さまざまな症状を引き起こします。また、気・血・水そのものの代謝異常によって引き起こされる場合がありますので、その組み合わせによって分類は膨大な数にのぼります。ここでは、その中でも最も多い症状について見ていきます。
①気滞タイプ
【原因】
気滞というのは、文字通り気が滞る状態をいいます。いろいろな原因で気は滞りますが、もっとも多い原因は感情の乱れ。それから飲食の不摂生や生まれながらの虚弱体質があります。気が塞ぐなんていうことを言いますが、まさに気がスムーズに流れなくなってしまうのですね。体力がない人や過労状態の人は、さらに輪をかけて気の運動が低下していますので、気がますます滞ってしまいます。
【症状】
胸脇部、乳房、胃の脹満感や疼痛。精神抑鬱・イライラして怒りっぽい・月経痛
②肝気鬱結タイプ
【原因】
肝気というのは、体内の気の流れをスムーズにする働きがあります。肝気は、ストレスにとても弱い気で、長い間ストレスを受けて、それが上手く解消できないでいると、肝気の機能が低下して、肝気が滞ってしまいます。また、肝は血を蓄えている臓腑ですので、血が不足することによって肝気の活動が低下して引き起こされる場合もあるのです。
【症状】
胸脇部の脹満感・胸苦しい・よく溜息をつく・精神抑鬱・よく怒る・のどに何か詰まったような感じがある・生理不順・生理前に乳房が脹り痛む
③心腎不交タイプ
【原因】
心と腎は、丁度火と水の関係で、お互いに助け合っている関係なのです。火の勢いが強くならないように水でコントロールして、水が必要以上に多くなって冷えないように、火でコントロールしているのです。腎の機能が低下していくと、この関係が上手くいかなくなり、火の勢いが強くなり過ぎる場合と、心の火が何らかの原因で強くなりすぎて、腎の水によるコントロールが出来なくなってしまう場合があり、この証が引き起こされます。
【症状】
胸苦しい・不眠・動悸・健忘・めまい・耳鳴り・腰がだるい・手足のほてり・喉や口が渇く
④心脾両虚タイプ
【原因】
血が不足したり、脾の機能(消化器系の失調)が同時に起こると、この証が起こります。産後の肥立ちが悪かったり、慢性的な出血があったり、あるいは過度の思慮や飲食の不摂生が重なると、血を損傷し、脾の機能が低下して、心気と脾気が損傷されてしまいます。
【症状】
動悸・健忘・不眠・多夢・食欲減退・お腹の膨満感・軟便・倦怠感・脱力感・皮下出血・生理不順
⑤肝脾不和タイプ
【原因】
肝気は、体内の気の流れをスムーズにする働きがあり、脾気は、体内の代謝をスムーズにする働きがあります。お互いの気が協調して体内の気・血・水のめぐりが滞りなく行われるのですが、感情の乱れやストレス、飲食の不摂生によって、両方の気を損傷してしまうと、この証を引き起こしてしまいます。
【症状】
胸脇部の脹満感・よく溜息をつく・精神抑鬱・イライラする・食欲減退・お腹の膨満感・下痢あるいは便秘・腹鳴・腹痛
自律神経失調症のタイプ別治療方法
【基本治療】
自律神経失調症は、全身の様々な不定愁訴、症状が現れる疾患ですので、その不定愁訴の改善を中心に治療し、全身の調整をしていきます。
基本治療以外は、タイプ別に下記のような治療をしていきます。
気滞タイプ | 【理気行滞法】 気の流れを良くする治療が中心になります。胃に脹痛がある場合には、胃に関係する経穴を加える、精神的なイライラがある場合には肝気の流れを良くする経穴を加えるなどの、加減をします。それぞれの経穴に鍼と温灸によって刺激を与え、体内の気の流れを良くしていきます。治療部位は、腰と下腹部、下肢の前面になります。 |
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肝気鬱結タイプ | 【疎肝理気法】 肝気の流れを良くする治療が 中心になります。肝に関係する経穴(ツボ)に鍼と温灸によって刺激を与え、肝気の流れをスムーズにします。?血を伴う場合には、血の巡りを良くする経穴を加え、月経痛などの月経不順を伴う場合には、それらに関係する経穴を加えていきます。治療部位は、腰と、下肢前面、前腕部になります。 |
心腎不交タイプ | 【交通心腎法】 腎気と心気の相互関係が治療が中心になります。腎気に関係する経穴に鍼と温灸によって刺激を与え、体内の気を充実させます。また心気に関係する経穴特に冷え強い部分に対しては、灸を多用して治療していきます。治療部位は、腰と下腹部、下肢の前面になります。。 |
心脾両虚タイプ | 【補益心脾法】 心と脾の気を補う治療(補益心脾治療)が中心になります。心や脾に関係する経穴に鍼と温灸によって刺激を与え、心気を補うことで、血液循環を良くし、脾気を補うことで、消化器系を整えます。月経不順の方には、月経改善の経穴を加えて治療していきます。治療部位は、腰と下腹部、膝下の前面、手首になります。 |
肝脾不和タイプ | 【調和肝脾法】 肝気の流れを整え、脾気を補う治療(調和肝脾治療)が中心になります。肝と脾に関係する経穴に鍼と温灸によって刺激を与え、肝気と脾気の調和を図ります。胃の膨満感が強い場合には、胃を整える経穴を加えて治療していきます。治療部位は、腰と下腹部、下肢の前面になります。 |
自律神経失調症は症状がさまざまですので、ここの紹介した治療以外にもその症状にあわせた治療法を組み合わせて行います。
治療期間と周期
週1回を基本として、8~10回の治療を1クールとして、概ね1クール毎に症状が変化していきますので、体調に合わせて治療期間を設定していきます。
1クール目は最も辛い症状を中心に治療(標治)していきます。余分なものは取り除き、足りないものを即席に補います。辛い症状が改善した以降は、体質改善(本治)を中心に治療を行っていきます。じっくり足りないものを補充し、体をリラックスさせ、体全体の調和を図ります。
治療の周期としては、辛い症状が取れるまでは週1回程度が目安となります。最初の症状が取れたら、次はじっくりモードで隔週1回~月1回となります。
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